成長市場

蓄電池は過熱か不足か。2億kWの申込と128万kWの落差を読む

蓄電池には申込みが殺到している。これは投資の好機とも、過熱の兆しとも読める。だが実際に動いている設備はごくわずかである。この落差は、何を意味するのか。

ドリサポ編集部読了 約5分

郊外の空き地に、白いコンテナが整然と並ぶ。送電線のそばに現れるこの設備は、再生可能エネルギーの時代の新しい投資先として語られるようになった。

通説は単純である。電気をためて高いときに売る事業には追い風が吹いており、早く場所を押さえた者が勝つ。実際、資源エネルギー庁の2026年10月の資料によれば、2026年6月末の接続検討の受付は約2億1,100万kW、契約申込みは約4,100万kWに達した。2023年1月の接続検討は879万kWにすぎなかったから、3年余りで20倍を超えた計算である。これを見れば、誰もが急がねばと考える。

だが、動いているのは128万kWである。

申込みの山は、需要の大きさを示しているのか

同じ資料が示す連系済みの量は、接続検討の受付量の1%にも届かない。政府の見通しと比べると、落差はなお際立つ。2024年5月の資源エネルギー庁の資料は、2030年の系統用蓄電池の導入見通しを累計14.1〜23.8GWh程度としている。これは3時間率を仮定した推計であり、同じ前提で接続検討の受付量を単純に換算すると約630GWhとなる。見通しの上限の20倍を超える。

この山の中身を、資源エネルギー庁自身が問題にしている。2025年6月の資料は、事業の確度が低いまま長く連系の予約を維持する空押さえや、自らは事業を行わず権利を有償で譲渡する例を挙げ、回答書が数十件の束で取引されることもあると記した。2026年8月には1事業者あたりの接続検討の申込件数に上限が導入され、現在22万円である検討料の引き上げや、撤退時に費用負担を求める預託金の案も議論されている。

かくして、この数字が映すものは事業の需要というより、順番待ちの権利の値段である。市場が過熱しているのは、蓄電池そのものではなく、列に並ぶ権利の方なのではないか。

列が短くなったあとに、何が問われるのか

規律が強まるほど、権利を持つだけの参加者は退場しやすくなる。その先で問われるのは、つなぐ場所を確保した案件を実際に建て、動かし、収益を上げる力である。資源エネルギー庁の2025年12月の資料は、系統増強が接続までの時間を長引かせ費用も増やしているとし、充電側のノンファーム型接続の仕組みの開発には5年以上を要する可能性にも触れた。列が短くなっても、待ち時間そのものが消えるわけではない。

つまり、この市場は早い者勝ちの競争から、待つ体力の競争へ移りつつある。国の導入支援では2024年度に27案件、約346億円が交付決定され、2025年度当初予算案にも400億円が計上された。長期脱炭素電源オークションの第1回では蓄電池109.2万kWが落札された。こうした大型の枠とは別に、中堅企業にとって現実的な入口は、規模の競争より自社の条件を活かせる場所にある。工場の受電設備や遊休地を持つ企業は需要の近くに設備を置ける。電気工事や保守の能力を持つ企業は運転の段階を担える。経済産業省の委託調査の報告書によれば、業務・産業用の導入量は2024年の約1.1GWhから2030年に約2.9GWh、2040年に約5.5GWhへ増えると見込まれている。派手な数字ではない。だが権利の束が取引される市場とは、性質が異なる。

読めない収入に、どの期間の資金を当てるのか

資金の難所は、収入の性質にある。2024年5月の資料が引く2022年12月の整理では、電力市場などでの収入を組み合わせて投資を回収する事業モデルが想定される一方、当時は導入費用に対して収益が見合っていないとされた。2025年3月の経済産業省の資料も、各市場での収益性の評価が不十分だと指摘する。売上を固定の単価で約束する相手が、最初から存在するわけではないのである。

こうした事業に、設備の全額を長期の借入で当てるのは危うい。市場の単価が想定を下回っても返済が止まらないからである。自己資本の比率を厚くするのか、一部の容量を固定収入の枠に回して返済の土台をつくるのか、あるいは自社の電力費の削減という確実な効果を試算の中心に置くのか。組み立ては企業ごとに異なるが、順序は共通する。市場収入をゼロに近く置いても、既存事業のキャッシュフローで返済が回る規模を先に定めるのである。

待ち時間も資金の費目である。連系までの期間が長引けば、土地代や保証金は収入のないまま寝ることになる。その間の金利は変動なら上昇の余地を抱え、固定なら足元の水準を受け入れることになる。補助金も、採択を前提にした規模の設計は避けたい。不採択の時に計画が宙に浮くからである。

並んだコンテナの中身は、何になるのか

郊外の空き地に並ぶ白いコンテナは、これからも増えるのであろう。だが2億kWの列の先頭に立つことと、そのコンテナで利益を上げることは別の事業である。権利の値段が落ち着いたとき、残るのはどの企業の、どの資金の設備なのか。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。

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