要請の概要と対象地域
九州財務局鹿児島財務事務所長と日本銀行鹿児島支店長は、令和8年台風第18号に伴う災害等により災害救助法が適用された鹿児島県内の被災者等を対象に、預貯金取扱金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者、電子債権記録機関に対して金融上の措置を講ずるよう要請した(令和8年9月30日付)。今後、災害救助法の適用地域が追加された場合も同様の要請を行うとされている。本要請は特定の金融機関の対応を保証するものではなく、各機関への「要請」である点に留意が必要である。
預貯金取扱金融機関への要請内容
要請には、被災企業の資金繰りに直結する項目が複数含まれている。主なものは次の通り。
- 定期預金・定期積金等の期限前払戻しへの対応、および当該預金等を担保とする貸付への対応
- 支払期日が経過した手形について、関係金融機関と話し合いのうえ取立を可能とすること
- 災害等のため支払いができない手形・小切手について、不渡報告への掲載や取引停止処分に対する配慮
- 融資相談所の開設、融資審査における提出書類の必要最小限化、融資の迅速化
- 既存融資にかかる返済猶予等、貸付条件の変更
- 罹災証明書を求める手続きでも、現況写真の提出など他の手段による被災状況確認や、罹災証明書の後日提出を認める取扱い
既存の借入について返済条件の見直しを金融機関に相談する際、こうした要請が出ている事実は、交渉の前提として押さえておく価値がある。
債務整理ガイドラインへの言及
要請の中では、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きや利用による効果等の説明を含め、同ガイドラインの利用に係る相談に適切に応ずることも求められている。既往債務の整理を検討する経営者は、取引金融機関にこのガイドラインの利用可否について相談することが選択肢になりうる。ただし、ガイドラインの具体的な適用要件や効果については、本要請文書に詳細な記載はなく、別途制度の原典を確認する必要がある。
証券会社・保険会社・電子債権記録機関への要請
証券会社等に対しては、届出印鑑等を紛失した場合でも本人確認の上で払戻しに応ずること、預かり有価証券等の売却・解約代金の即日払いの申出があった場合に可能な限り応ずることが要請されている。生命保険会社・損害保険会社・少額短期保険業者に対しては、保険金等の支払いをできる限り迅速に行うこと、保険料の払込猶予期間の延長等が求められている。電子債権記録機関に対しては、電子記録債権の取引停止処分や利用契約の解除等について配慮することが要請されている。手形取引や保険契約を通じた資金繰りを行っている企業は、これらの取扱いも併せて把握しておくとよい。
実務上のポイント
被災した鹿児島県内の企業は、まず取引金融機関の店頭掲示や窓口で、罹災証明書の代替手段(現況写真等)が認められるか、既存融資の返済猶予や条件変更に応じてもらえるかを確認することが実務上の第一歩になる。罹災証明書の発行を待たずに相談を始められる点は、資金繰りが逼迫している局面で時間を稼ぐ意味を持つ。また、手形の支払期日が経過している場合は、不渡報告への掲載や取引停止処分について配慮を求められる余地があるため、取引金融機関に早めに事情を説明しておくことが望ましい。本要請はあくまで金融機関への「要請」であり、個別の対応可否は各金融機関の判断による点には留意する。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。