2026年7月29日、財務省九州財務局長と日本銀行熊本支店長は、令和8年熊本地震に係る災害救助法適用地域の被災者・被災企業に対し、預貯金取扱金融機関や証券会社等に金融上の措置を講じるよう要請した。既存融資の条件変更や書類手続きの簡素化など、資金繰りに直結する内容を含む。
誰が何を要請したか
2026年7月29日付で、財務省九州財務局長と日本銀行熊本支店長の連名により、令和8年熊本地震に係る災害等(災害のおそれを含む)で災害救助法が適用された熊本県内の被災者等に対し、預貯金取扱金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者及び電子債権記録機関に金融上の措置を講じるよう要請が出された。今後、災害救助法の適用地域が追加された場合も同様に対応するよう求めている。あくまで行政による「要請」であり、個別の対応は各金融機関の判断に委ねられる点は押さえておきたい。
資金調達・資金繰りに関わる要請内容
預貯金取扱金融機関への要請のうち、中小企業の資金繰りに直結するのは以下の項目である。
- 災害等の状況や応急資金の需要を勘案し、融資相談所の開設、融資審査に際して提出書類を必要最小限にするなどの手続き簡便化、融資の迅速化、既存融資にかかる返済猶予等の貸付条件の変更等、便宜を考慮した措置を講ずること
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きや利用効果の説明を含め、同ガイドラインの利用に係る相談に適切に応ずること
- 支払期日が経過した手形について関係金融機関と話し合いのうえ取立てを可能にすること、支払不能となった手形・小切手の不渡報告掲載や取引停止処分に配慮すること
- 罹災証明書を求めている手続きについても、現況写真の提出など他の手段による被災状況確認や罹災証明書の後日提出を認めるなど便宜を図ること
証券会社等に対しても、有価証券紛失時の再発行協力や、預かり有価証券等の売却・解約代金の即日払いへの対応が要請されている。
銀行との交渉でどう使えるか
本要請は、既存の借入について返済猶予などの条件変更を相談する際の後ろ盾になり得る。「融資審査に際して提出書類を必要最小限にする」という項目は、罹災直後で決算資料や担保関係書類の整備が難しい局面で、簡便な手続きでの融資相談を持ちかける根拠となる。
また、罹災証明書の交付が市町村の窓口混雑等で遅れる場合でも、現況写真など代替手段による被災状況の確認や後日提出が認められ得る点は、融資申込みや条件変更の相談を罹災証明書待ちで止めない実務上の判断材料になる。
手形・電子記録債権の支払いが災害の影響で滞った場合の不渡報告掲載・取引停止処分への配慮も明記されており、資金繰りが逼迫する局面で取引先や金融機関との調整材料として説明しておく価値がある。
留意点
本要請は2026年7月29日時点の内容であり、対象は災害救助法が適用された熊本県内の地域に限られる。適用地域が追加された場合も同様の要請が行われるとされているため、自社の所在地が対象範囲に含まれるかは最新の適用状況を確認する必要がある。また、要請はあくまで金融機関に対する行政上の依頼であり、返済猶予や融資条件変更が自動的に実行されるものではない。実際の対応は個別の相談・審査を経て決まる点に留意したい。
実務上のポイント
被災した企業は、まず取引金融機関の窓口で罹災状況を伝え、既存融資の返済条件変更や新規融資の相談を持ちかけることが実務上の第一歩になる。罹災証明書が未取得でも、現況写真等での代替確認が認められる場合があるため、証明書待ちで相談を先延ばしにしない。あわせて「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の利用可否についても、金融機関に説明を求めておくとよい。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。