2026年9月7日、九州財務局鹿児島財務事務所と日本銀行鹿児島支店は、令和8年台風第24号及び前線による大雨で災害救助法が適用された鹿児島県内の被災者等に対し、預貯金取扱金融機関等に金融上の措置を講じるよう要請した。既存融資の取扱いに関わる部分を中心に、実務上の確認点を整理する。
何が要請されたか
九州財務局鹿児島財務事務所長と日本銀行鹿児島支店長は連名で、令和8年台風第24号及び前線による大雨に伴う災害等(災害のおそれを含む)により災害救助法が適用された鹿児島県内の被災者等について、預貯金取扱金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者、電子債権記録機関に対し金融上の措置を講じるよう要請した。日付は令和8年9月7日。今後、災害救助法の適用地域が追加された場合も同様の対応を求めるとされている。
この種の要請は災害発生のたびに財務局と日銀連名で出されるもので、法的拘束力を持つ規制ではなく金融機関への配慮要請という位置づけである。ただし、実際の融資取引・預金取引の窓口対応に直結するため、対象地域の事業者は自社の取引金融機関がどこまで対応しているかを確認しておく必要がある。
既存融資・資金繰りに関わる要請内容
預貯金取扱金融機関への要請のうち、中小企業の資金繰りに直接関わるのは以下の項目である。
- 融資相談所の開設、融資審査の提出書類を必要最小限にする等の手続き簡便化、融資の迅速化
- 既存融資にかかる返済猶予等の貸付条件の変更
- 定期預金・定期積金等の期限前払戻し、及び当該預金等を担保とする貸付への対応
- 支払期日が経過した手形について関係金融機関と話し合いのうえ取立ができることとする対応
- 災害等のため支払いができない手形・小切手について、不渡報告への掲載及び取引停止処分に対する配慮(電子記録債権の取引停止処分・利用契約解除等についても同様の配慮)
「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」についても、手続きや利用による効果等の説明を含め、相談に適切に応ずることが要請されている。既存借入の返済が厳しい場合、この制度の利用可否を含めて取引金融機関に相談する余地がある点は確認しておきたい。
罹災証明書がなくても手続きが進む場合がある
要請では、罹災証明書を求めている手続きについても、市町村における交付状況等を勘案し、現況の写真の提出など他の手段による被災状況の確認や、罹災証明書の後日提出を認める等、被災者等の便宜を考慮した取扱いとすることが盛り込まれている。罹災証明書の発行に時間を要するケースでは、金融機関側にこの取扱いの適用可否を確認することで、資金調達や条件変更の手続きを先に進められる可能性がある。
また、預金証書・通帳・届出印鑑等を紛失した場合でも、被災状況を踏まえた確認方法により本人確認のうえ払戻しに応ずることとされており、証券会社についても同様の対応(有価証券紛失時の再発行協力、預かり有価証券等の売却・解約代金の即日払いへの対応を含む)が要請されている。
保険会社・電子債権記録機関への要請
生命保険会社、損害保険会社及び少額短期保険業者に対しては、保険証券・届出印鑑等を紛失した契約者について、申出内容が確認できれば保険金等の請求案内を行うなど便宜措置を講ずること、保険金の支払いをできる限り迅速に行うこと、保険料の払込猶予期間の延長等が要請されている。事業用の火災保険・地震保険等に加入している事業者は、証券紛失時でも請求手続きが可能である点を踏まえて対応を検討できる。
電子債権記録機関に対しても、被災者の電子記録債権の取引停止処分又は利用契約の解除等について配慮することが要請されており、でんさい等を利用している事業者にとっても関係する内容である。
実務上のポイント
鹿児島県内で被災した事業者は、まず取引金融機関の窓口またはホームページで、今回の要請に基づく具体的な対応内容(返済猶予の申込窓口、必要書類の簡素化の範囲、罹災証明書の代替提出方法)を確認するとよい。既存融資の条件変更を検討する場合は、決算書・資金繰り表など通常の審査資料に加え、被災状況を示す写真等を用意しておくと、罹災証明書の交付を待たずに相談を進められる可能性がある。自然災害債務整理ガイドラインの利用を検討する際は、利用による信用情報への影響等も含めて金融機関または顧問税理士・弁護士に確認することを勧める。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。