令和8年7月13日、近畿財務局大津財務事務所長と日本銀行京都支店長は、滋賀県甲賀市の土砂崩れに係る災害等について、被災者・被災企業向けの金融上の措置を金融機関等に要請した。災害救助法適用地域の事業者にとっては、融資審査や返済条件の面で実務上の選択肢が広がる内容であり、対象となりうる経営者は内容を把握しておく意味がある。

何が起きたか(2026年8月時点)

令和8年7月の滋賀県甲賀市の土砂崩れにより災害救助法が適用された滋賀県内の被災者等に対し、近畿財務局大津財務事務所と日本銀行京都支店が連名で、預貯金取扱金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者、電子債権記録機関に金融上の措置を講ずるよう要請した(令和8年7月13日付)。今後、災害救助法の適用地域が追加された場合も同様の対応が要請されている。

預貯金取扱金融機関に対する要請の内容

企業の資金繰りに直接関わる要請として、以下が挙げられている。

  • 預金証書や通帳、届出印鑑等を紛失した場合でも、被災状況を踏まえた確認方法により本人確認のうえ払戻しに応じること
  • 定期預金・定期積金の期限前払戻し、および当該預金等を担保とする貸付にも応じること
  • 支払期日が経過した手形について、関係金融機関と話し合いのうえ取立を可能にすること
  • 災害等のため支払いができない手形・小切手について、不渡報告への掲載や取引停止処分に対する配慮を行うこと。電子記録債権の取引停止処分・利用契約解除等についても同様の配慮
  • 融資相談所の開設、融資審査における提出書類の必要最小限化、融資の迅速化、既存融資に係る返済猶予等の貸付条件変更など、便宜を考慮した措置
  • 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続き・効果の説明を含めた相談対応
  • 罹災証明書の交付状況を踏まえ、写真提出など他の手段による確認や後日提出を認める取扱い

証券会社・保険会社・電子債権記録機関への要請

証券会社等には、届出印鑑紛失時の本人確認による払戻し、有価証券紛失時の再発行手続きへの協力、預かり有価証券の売却・解約代金の即日払いへの対応が要請されている。

生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者には、保険証券・印鑑紛失時でも契約内容が確認できれば保険金請求案内など便宜を図ること、保険金支払いの迅速化、保険料払込猶予期間の延長などが要請されている。

電子債権記録機関には、被災者の電子記録債権の取引停止処分または利用契約解除等への配慮、休日営業・時間外営業への適宜配慮が求められている。

被災企業の実務にどうつながるか

この要請はあくまで金融機関等への行政要請であり、個別の免除や減免を保証するものではない。ただし、既存融資の返済猶予や条件変更、融資審査の簡便化・迅速化が「要請事項」として明記されている点は、資金繰りに窮する被災企業が金融機関と交渉する際の足がかりになりうる。

また、罹災証明書の交付が遅れている場合でも、写真等による被災状況の確認や後日提出が認められる取扱いが要請されているため、証明書待ちで手続きが止まっている企業は、この点を金融機関の窓口で確認する価値がある。

手形・小切手の不渡りに関する配慮や電子記録債権の取引停止処分への配慮も、資金決済に支障が生じている企業にとっては実務上重要な論点である。

実務上のポイント

該当地域で事業を営む経営者・経理財務責任者は、まず自社の取引金融機関の窓口に「今回の要請に基づく対応可否」を確認するとよい。特に(1)既存融資の返済条件変更の相談余地、(2)罹災証明書が未取得でも代替書類で手続き可能か、(3)手形・電子記録債権の支払遅延に対する不渡り・取引停止処分の配慮の適用可否、の3点は交渉時に具体的に尋ねるべき事項である。要請内容は金融機関の裁量に委ねられる部分も大きいため、書面や記録を残しながら相談を進めることを勧める。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。