成長市場

少子化でも学童は増える。157万人の放課後は誰が担うのか

子ども向けの事業は少子化で縮むと考えられやすい。だが放課後児童クラブの登録児童数は過去最高を更新し、運営の担い手も入れ替わり始めた。人が主役のこの事業で、資金はどこに必要になるのか。

ドリサポ編集部読了 約5分

夕方6時すぎ、小学校の敷地の片隅にある建物の前で、仕事帰りの親が子どもを迎えに来る。自転車の後ろに子を乗せて帰る姿は、いまや多くの町で見慣れた光景になった。放課後の数時間は、家族の中だけでは埋まらない時間になっている。

こうした施設は、一般に事業の話題にはなりにくい。子どもの数はこれからも減り、福祉の色合いが濃く、収益は補助金次第である。企業が本腰を入れる市場ではなく、自治体と地域の善意が支える領域だと思われがちである。

だが、その前提は統計と噛み合わない。

子どもが減れば、学童も減るのか

こども家庭庁の「令和7年 放課後児童健全育成事業の実施状況」によれば、2025年5月1日現在の登録児童数は157万645人で、前年から5万693人増えて過去最高を更新した。クラブ数は2万5,928か所、支援の単位数は3万9,424と、こちらも増えている。少子化という大きな流れとは逆に、利用する子どもの数は前年より増えたのである。

学年別の内訳は、もう一段踏み込んだ事実を示す。登録児童のうち小学1年生は29.1%を占める一方、4年生は19万8,714人で前年から1万4,716人増え、5年生と6年生もそれぞれ増えた。待機児童の数を見ると、最も多いのは1年生ではなく4年生の5,589人である。待機児童全体は1万6,330人で前年より1,356人減ったが、東京都の3,360人を筆頭に、都市部に偏っている。低学年の居場所として始まった仕組みに、高学年の需要が重なってきた形である。

もっとも、この数字をそのまま「急成長市場」と読むのも早い。同じ調査の2025年10月1日時点の速報値では、登録児童数は152万3,192人へ、待機児童数は7,363人へと減っている。同じ年度の中でも、数字にはこれだけの波がある。席数を増やせば増やしただけ埋まる事業ではない。

本当に変わったのは、誰が運営しているかではないか

同じ調査で目を引くのは、利用者の数よりも運営主体の動きである。公立公営のクラブは5,800か所で前年の6,176か所から減り、公立民営は1万3,543か所で全体の52.2%を占めるまでになった。その内訳のうち、株式会社が運営するクラブは3,554か所から4,299か所へ、1年で745か所増えている。公立民営全体の増加は467か所であるから、社会福祉法人や保護者会などからの置き換わりを含めて、株式会社が増加分を上回って伸びた計算になる。運営委員会・保護者会が運営する公立民営のクラブは2,552か所から2,362か所へ減った。

ここから読み取れるのは、保護者の持ち回りと善意で支えてきた運営が、組織で引き受ける形へ移りつつあるということである。背景の一つは事業の重さであろう。同じ調査では、平日の終了時刻が18時31分から19時までのクラブが54.9%、年間の開所日数が280日から299日のクラブが59.6%を占める。職員は21万2,867人に増えたが、放課後児童支援員のうち常勤は5万7,597人で、補助員を含めれば常勤以外が大半を占める。長時間開け続け、毎年の採用と研修を回す仕事を、ボランティアに近い体制で担い続けるのは難しい。

つまり放課後の市場を動かしているのは、子どもの数ではなく、運営の担い手の不足である。これは教育事業でも施設事業でもなく、人を確保し続ける能力を自治体に提供する事業に近い。全国展開の大手には1か所あたりの規模が小さい。登録児童数が31人から50人の単位が57.1%を占める。一方で小さな団体には採用と労務の負担が大きい。保育や介護、給食、教育など、地域で人を束ねてきた中堅企業が入り込む余地は、この間にある。

人が主役の事業に、資金はいつ要るのか

放課後児童クラブは建物に大きな投資をしない限り、一見すると資金負担の軽い事業に映る。しかし資金の山は別のところに現れる。自治体から受託する場合、開所前から採用と研修が始まり、人件費は毎月出ていく一方で、委託料の入金時期と金額は契約に縛られる。複数の自治体で一度に受託を増やせば、立ち上げ費用も立て替えも重なる。受託期間が終われば次の公募で失う可能性もあり、その期間を超える回収を前提にした投資は組みにくい。

だからこの事業の資金設計は、設備の借入より運転資金の枠と受託の増やし方の問題になる。受託数を増やす速度を、手元資金と短期の借入枠で耐えられる範囲に抑える。人件費が前倒しで増える一方で委託料が据え置かれる局面を想定し、1か所あたりの損益を実績で管理する必要がある。民立民営として施設を自前で構える場合は、話が変わる。こども家庭庁の資料によれば、施設整備費の負担割合は民立で国と都道府県、市町村が各2/9、社会福祉法人等が1/3で、待機児童が発生している市町村等では国が1/2、都道府県と市町村が各1/8、社会福祉法人等が1/4に軽くなる。補助で負担が軽くなる地域は、裏返せば需要が読みやすい地域でもある。だが借入の返済期間に対して、児童の増加がどの程度続くのかは地域ごとに違い、学区の人口の見通しと突き合わせなければならない。

人件費の側では、キャリアアップ処遇改善事業が経験に応じて支援員1人あたり年額13万1千円から39万4千円までを定め、令和7年度補正予算案には企業等の活力を活かした小学生の預かり機能構築モデル事業として10億円が計上された。こうした制度を前提に賃金を組み立てるなら、制度が変わった場合に会社の負担がどう動くかも同時に見ておく必要がある。賃金を上げることは採用の条件であり、同時に固定費の積み増しでもあるからである。

夕方の迎えの列は、何を映しているのか

夕方の校庭の片隅で子どもを迎える親の列は、変わらない日常の風景に見える。だがその建物の鍵を開ける主体は、この数年で静かに入れ替わり始めている。

子どもの数が減る国で、放課後の時間だけが足りなくなっていく。その時間を預かる人を毎年確保し続ける仕事を、誰が、どの程度の資金の厚みで引き受けるのか。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。

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