成長市場

再生材はコストか。利用義務が浮かび上がらせる供給側の投資

分別された廃プラスチックは、その多くが再び原料に戻らない。改正法は再生材の利用計画を製造事業者に求めるが、利用量の報告は当面免除される。需要は本当に立つのか。立つとして、供給の設備に誰が資金を投じるのか。

ドリサポ編集部読了 約6分

ごみの収集日の朝、プラスチックの袋が集積所に積まれる。きちんと分けて出している以上、これは再び製品に戻っていくのだと、多くの人は思っている。企業の側でも、再生材の使用は環境報告書の一項目であり、値の張る調達先をどこまで我慢できるかという費用の話として扱われてきた。

再生材はコストであり、余裕のある大企業が担う責任である。製造の現場に立つ経営者ほど、この見方は実感に近いかもしれない。バージン材より高く、品質もぶれるなら、できるだけ先送りするのが合理的だ。

その前提が、供給の側から崩れ始めている。

集めたプラスチックは、どこへ行っているのか

経済産業省の2025年6月の資料によれば、国内の廃プラスチックは年間800万〜900万トン発生しているにもかかわらず、国内で再生資源として利用される割合は5%程度にとどまる。約60%は焼却発電などの熱源に回るとされる。分別の熱心さと、原料への戻りにくさの間には、これだけの開きがある。

同じ資料は用途別の消費量も示す。自動車115万トン、電気電子機器130万トン、容器包装350万トン、建材95万トンである。家電4品目では、14万トンの再生プラスチックが生産されて再利用可能であるのに、4品目への利用は1万トンに留まるという。自動車でも、バンパーなど一部の部品を除けば、安全性などの品質を満たす再生材の供給が進んでいないと記される。

2024年12月の審議会の中間とりまとめは、この構造をより率直に書いている。国内の中間処理業者やリサイクル業者には、供給量の確保や品質向上に積極的に投資するメリットが欠けており、国内需要に応える供給能力が十分ではない、と。つまり再生材が高く不安定なのは、必ずしも技術の限界だけが原因ではない。買い手が確実にいないから投資されず、投資されないから品質が揃わず、品質が揃わないから買い手が現れない。循環は、資金の循環の段階で止まっていたのである。

義務化は、この循環を本当に動かすのか

改正された資源有効利用促進法は令和8年4月1日に施行された。経済産業省の資料によれば、プラスチック製容器包装(食品や医薬品等を除く)、自動車、家電4品目が再生プラスチック利用の対象となり、計画の提出は2027年度から毎年度9月末日まで、定期報告は2028年度からとされる。自動車編のガイドラインでは、生産量または輸入販売量が1万台以上の事業者に、10年以内の目標値の報告を求めている。

第五次循環型社会形成推進基本計画は、循環経済関連ビジネスの市場規模を現在の50兆円から2030年までに80兆円以上、2050年までに120兆円とする目標を掲げ、プラスチック再生利用量を2030年度までに倍増するとも掲げる。これだけ読めば、確実な成長市場が約束されたように見える。

だが、逆向きの一文が同じガイドラインにある。再生プラスチックの利用量・利用率の定量報告は、当面の間免除されているのである。開始時期は、開始事業年度の2年前を目処に通知される予定とされる。審議会でも、定量目標の将来的な導入は業界特性や供給状況を見極めて検討するとの整理であった。法律は買い手に計画を書かせるが、いつ、どの量を買うかまでは、まだ縛っていない。

ここが、この市場を読み違えやすい点である。問題は「義務化されるから需要が来るか」ではない。需要家が10年以内の目標値を計画に書く段階になれば、自社の目標を裏づける供給元を探し始める。数値の縛りが弱いうちほど、品質を満たす供給者はまだ数が少なく、先に組んだ相手との関係が固定されやすいのではないか。再生材の価値は重さあたりの単価より、仕様を満たす量を継続して出せるという供給の信頼に移っていく。素材から製品までの長さを考えれば、選別と品質管理を担う中堅規模の事業者が結節点になる余地がある。

需要が確定しない設備に、どう資金を付けるのか

難しいのは、この投資の順序である。設備は先に要り、需要の確定は後から来る。定量報告の開始時期も未定である以上、法改正を理由に満額の稼働率を置いた返済計画は作れない。自社の既存事業のキャッシュフローで、稼働が立ち上がらない数年間の返済を支えられるか。これが投資の可否を分ける最初の問いになる。

公的支援は厚い部類に入るが、万能ではない。環境省のプラスチック・金属資源の高度化設備導入事業は、省CO2型プラスチック高度リサイクル設備などについて導入費用の2分の1を上限に補助し、2026年6月から7月に公募が行われた。再生材供給サプライチェーン構築支援事業も、金属資源などの解体・選別設備や、荷役・積替・保管施設の導入に対し2分の1を上限とする。いずれも残る半分は自己資金と借入で組む必要があり、公募の時期に投資判断を縛られる。20億円以上の投資なら、経済産業省の大規模成長投資補助金(補助上限50億円、補助率3分の1以下)も視野に入るが、給与の年平均上昇率5.0%以上という要件は、稼働前の固定費に重なる。

借入についていえば、設備の耐用年数に近い長期の資金を基本に、立ち上がりの据置期間をどう確保するかが要点になる。需要家との複数年の引取り合意が取れれば、それは売上の見通しであると同時に、資金調達の材料にもなる。合意が取れない段階では、選別や品質分析など小さく始められる工程から投資を分割し、リースで陳腐化のリスクを外に出す組み方も考えられる。使う側の製造業にとっても、調達先への長期契約は単なる購買条件ではなく、将来の計画値を実現するための資金の問題である。

集積所の袋は、誰のものになるのか

収集日の朝の光景は、これからも変わらないように見える。袋は同じように積まれ、同じ車が運んでいく。

変わるのは、その袋の先にある取り合いである。量の義務がまだ課されていない数年間は、見方によっては猶予であり、見方によっては先に設備を構える者だけが持てる時間である。報告の免除が解かれる通知を待ってから動くのか、その前に返済の耐えられる範囲で小さく賭けるのか。集積所の袋を費用と見るか、原料と見るかは、そこで分かれる。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。

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