成長市場

外国人材の住居と教育は、本当にコストにすぎないのか

外国人材の受け入れは人手不足をしのぐコストにすぎないのか。転籍が可能になる育成就労のもとで、住居や教育の基盤を地域で束ねる事業は、どんな資金の組み方を求めるのかを考える。

ドリサポ編集部読了 約7分

2024年9月18日、秋田県能代市で、ダイサンが「地域の人事部」事業として、地域の外国人材の確保・受入の共通プラットフォームによる育成・定着支援事業の開始を発表した。同社を含む5社が連携し、能代市の企業が主体となって社団法人を設立するという。

設計の骨格は、一社の福利厚生ではない点にある。業界の垣根を越えて、スキームとノウハウの共有・共通化を進めるのが発表の趣旨である。にもかかわらず、このリリースからは投資額も利用の結果も読み取れない。確認できるのは、動き出したという事実だけである。

住居を整え、日本語を教え、暮らしの相談に乗る。その仕事を採用する企業が個別に抱えるのではなく、地域の複数社が共通の器に預ける。なぜ、その道を選ぶ必要があったのか。

「安い労働力」という見方は、何を見落としているのか

外国人材の受け入れは、人手不足をしのぐ安価な労働力の確保であり、コストにすぎない。そう考える経営者は少なくないはずである。厚生労働省の届出状況(令和7年10月末)によれば、外国人労働者数は2,571,037人と、前年の2,302,587人から11.7%増え、過去最多となった。数が増えるほど、コストの総額だけが膨らむように見える。

だが、制度の側が変わりつつある。外国人技能実習機構(JITCO)の資料によれば、技能実習制度では、実習先の倒産などのやむを得ない場合を除き、転籍は原則認められなかった。育成就労制度では、やむを得ない場合に加え、就労開始後1〜2年が経過すれば本人希望による転籍が可能になる。

条件は軽くない。出入国在留管理庁によれば、本人意向の転籍は同一の業務区分内に限られ、制限期間は当分の間、分野ごとに1年から2年の間で定められる。要件案には、技能検定試験基礎級等と、分野ごとに設定するA1〜A2相当の日本語試験への合格、転籍先が基準を満たしていることも含まれる。それでも、辞められない人を雇う時代から、条件を満たせば選ぶ側に回る人を迎える時代へと軸は移る。

つまり、住居や日本語教育、生活支援の質は、費用ではなく、選ばれる職場の条件になる。

事業所の数と働く人の数は、なぜ食い違うのか

厚生労働省の令和7年10月末のデータによれば、従業員30人未満の事業所は外国人雇用事業所の63.1%、234,086所を占める。前年比9.6%増で、規模別では最も増加率が高い。ここから「小規模事業所の需要を束ねれば市場になる」と結論したくなる。

数字は、そう素直ではない。同じデータで、30人未満の事業所で働く外国人労働者は928,267人、全体の36.1%にとどまり、1事業所あたりでは4.0人である。事業所数では多数派でも、人数では3分の1強にすぎない。残る約64%は30人以上の事業所にいる。4人の需要では寮も教室も埋まらず、かといって規模の大きい事業所は自前で整える余力を持つ可能性がある。

能代の5社連携は、この食い違いへの一つの答えに見える。一社ごとには小さい需要を業種を越えて束ね、一つの基盤の稼働に変える。もっとも、束ねられるかどうかは、小規模事業所が集まる地域と業種があるかに左右される。令和10年度末までの受入れ見込数は約123万人(1号特定技能80万5,700人、育成就労42万6,200人)とされるが、上限は需要の保証ではない。

寮の賃料で稼ぎにくい事業に、資金をどう置くか

需要を束ねる設計は、収入の安定の問題に直結する。転籍が1〜2年で可能になれば、受入企業との契約が短期のままでは、入居や教室の利用は転籍や分野変更で揺れる。利用料を基盤の維持にあたる固定部分と実利用に応じた変動部分に分け、契約期間中の転籍への対応を受入企業が負担するのか、基盤の運営側が抱えるのか。採算はここで分かれる。

利益の源泉にも注意が要る。特定技能1号の外国人に社員寮を提供する場合、賃料の徴収には厳しい規則があり、寮で利益を得ることは基本的にできないとする民間解説がある。一次資料では未確認であり、出入国在留管理庁の支援基準と運用要領での確認が前提である。仮にそうであれば、収益は賃料ではなく、教育や生活支援の運営受託に置く設計になる。

住居の持ち方も同じ構図をもつ。借上げは初期投資が小さく、需要が縮めば撤退しやすい。保有は利回りの余地があるが、空室が埋まるまでの運転資金と固定費が重い。需要の見えやすい部分は長めの賃貸借契約で、不確実な部分は短めに、と契約年数を配分する考え方がありうる。固定費を既存事業のキャッシュフローで何か月支えられるかを、回収期間と突き合わせる作業は避けられない。金利上昇局面では、借入の固定・変動と期間の組み方が、空室期間に耐える力を左右する。

補助金は柱になりにくい。国の外国人労働者就労環境整備助成コースは要件達成で20万円、一時帰国休暇の導入で最大25万円(2026年10月1日以降の計画提出分)とされ、対象は就業規則の多言語化や相談対応で、寮の取得費や賃借料は確認できなかった。東京都の令和6年度助成は対象経費の2分の1で、上限は標準プラン25万円。石川県の日本語能力向上支援補助金は1/2以内、上限100万円/団体である。いずれも民間解説を含み、公募要領での確認が必要であり、中堅企業が対象になるかは資本金・従業員数の定義次第である。寮の投資額に届く規模ではない。

需要の側にも時点の違いがある。日本賃貸住宅管理協会の令和4年10月調査では、外国人入居者の22.0%が希望の部屋への入居を断られた経験があった。法務省の2016年の調査では、過去5年間に住居を探した2,044人のうち約4割が、外国人であることを理由に断られている。母集団も時点も違うため、水準は比べられない。ただ、法人名義の借上げが審査・保証・言語の壁を企業側で吸収できるなら、それは束ねる側の付加価値になる。

能代の5社が共通の器に預けたものは何か

能代の発表に戻る。5社が共通の器に預けたのは、費用の負担だったのか、それとも選ばれる条件そのものだったのか。投資額も結果も、まだ公表されていない。

それでも、一社4人という小さな需要を束ねる設計と、転籍という新しい前提を並べると、同じ発表が違う光景に見えてくる。この基盤は、誰の需要を、どの契約期間で、誰のリスクとして引き受けるのか。資金の組み方は、その問いへの答えとして決まる。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。

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