成長市場

部活動は本当に「事業にならない」のか。受託する側の資金設計

採算は取れないとされてきた部活動の運営に、自治体は委託契約を出し始めた。補助金が自治体に入る制度のもとで、受託企業の収益と資金繰りはどこで決まるのか。

ドリサポ編集部読了 約7分

2023年8月、JR東日本スポーツ株式会社は千葉県千葉市から「中学校地域部活動業務委託」を受託した。翌9月には東京都豊島区から、地域ダンス部についての同種の業務委託を受けている。同社サイトのニュース欄に並ぶ、1か月違いの2件である。

実績紹介に目を移すと、千代田区、北区、川崎市、さいたま市、戸田市、蕨市、越谷市と、特別区から政令指定都市、近隣の市まで委託元の名が連なる。一社が複数の自治体から、同じ種類の業務を受けている。

だが、肝心の数字が見えない。投資額も収支も、確認できる範囲では開示されていない。契約の件数や受託の内容は分かっても、一件あたりの委託費も、指導者への支払いも、利益も分からないのである。

部活動は学校と教員の無償に近い貢献で成り立ち、事業として採算は取れない。そう信じられてきた領域に、自治体はなぜ契約書を出すのか。

採算が取れないはずの仕事に、なぜ契約が出るのか

通説には、根拠があった。つくば市は、これまでの学校部活動は中学校教員の指導が中心で、休日の指導の人件費は県が負担していたものの、平日の活動は教員のボランティアで運営されてきたと説明している。地域クラブ活動に変わると費用負担が増える、とも明記している。値段のついていなかった仕事を外へ出せば、誰かが払わなければならない。

問題は、誰がどう払うかだった。スポーツ庁・文化庁の費用負担の資料(令和7年7月)は、受益者負担、民間からの寄附等の活用、公的負担を適切に組み合わせて対応する必要があるとし、費用の例に指導者謝金、事務局人件費、旅費、消耗品費、会議費、保険料を挙げている。無償の貢献として見えなかったものが、費目として並べられたのである。

財布も用意された。令和8年度予算(案)で、地域クラブ活動費等の支援に要する経費は57億円、前年度予算額は37億円である(スポーツ庁資料)。文部科学省は2025年度補正予算の82億円と2026年度当初予算案の57億円を合わせて139億円とし、前年度の66億円の2倍を超えると、日本スポーツ協会の特集ページは伝えている。

需要の側も動く。スポーツ庁・文化庁の令和8年度調査では、2027年度までに休日の活動の地域展開を予定している市区町村は76.6%にのぼり、2023年度からの5年で約3倍になる見込みである(教育新聞)。国の骨子は、改革実行期間を前期の令和8〜10年度と後期の令和11〜13年度に分け、休日は原則すべての学校部活動での地域展開を目指すとしている。

認定制度も、市場の輪郭を描く。認定を受けた地域クラブには、財政支援や学校施設の優先利用・使用料減免などが想定されている。つくば市は令和8年10月1日から、市認定地域クラブが地域交流センター16か所と市民ホール4か所などを使う際の使用料を免除した。

つまり千葉市と豊島区の2件は、個別の事情ではない。教員の無償の貢献に頼れなくなった仕事を、公共が予算をつけて続ける。その構造の中に、受託という形が生まれたのである。

ただし、需要の大きさと、受託企業の利益は別の話である。経済同友会の提言は、土日どちらか1日の中学校部活動を年間50週行うと、全国で500億円程度の費用がかかるとしている。この数字は社会全体が負担する総額であり、一社の売上の見込みではない。

補助金は、誰の口座に入るのか

休日の地域クラブ活動の活動費等は、指導者謝金や事務局人件費を含めて、国・都道府県・市区町村が3分の1ずつを負担する(日本スポーツ協会特集ページ)。だが、この補助の受け手は主に自治体である。受託企業の口座に直接入るわけではない。

自治体が団体向けに設ける補助は、額も期間も小さく区切られている。新潟市の令和8年度の地域クラブ補助金は、謝金・研修受講料が30万円、消耗品費が10万円で、合計40万円が1団体の上限である。補助対象期間は令和9年2月28日までで、年度末より前に終わる。前橋市の補助金も事業対象期間は令和9年1月31日までである。数十億円規模の企業が見るべき収益源は、補助金そのものではなく、自治体との委託契約の側にある。

では参加費はどうか。スポーツ庁のガイドブックは、休日に週1日活動する場合の参加費の水準として月額1,000〜3,000円程度を例示していると、民間記事は整理している。二次情報である点には注意が要る。成田市の地域クラブは月3,500円の会費と登録料5,000円を設定するが、運営は市が民間事業者に委託しており、参加費だけでは回っていない。

原価の側にも圧力がある。経済同友会の提言によれば、ヒアリングした先駆的自治体では指導者への報酬が時給1,600円程度で、少額との指摘もある。報酬を上げれば、事業の開始前から人件費が膨らむ。委託費、参加費、企業寄附という三本の収入で、この原価を賄えるのか。答えは自治体ごとの委託費の設計で変わる。

そこで資金設計の焦点は、契約の期間に移る。単年度予算のままか、複数年度にまたがる支払いを自治体があらかじめ約束する債務負担行為が置かれているか。その違いが、正社員の統括責任者や車両、情報システムといった固定費を持てるかどうかを分ける。複数年契約が取れない地域では、車両は購入ではなくリースや既存の送迎手段の活用に寄せるほうが、撤退時の傷は浅い。

時間の問題もある。認定要件には原則として令和8年度末までの経過措置があり、令和9年度からは要件を満たす体制が前提になる(北海道教育委員会資料)。指導者の採用と育成にかかる先行人件費は、この時期に重なる。補助対象期間が年度末前に切れる例もあり、人件費や保険料を払う時期と入金の時期にはずれが生じる。つなぎ資金の必要額は、そのずれの大きさで見積もるしかない。

回収期間の置き方も問われる。前期の3年で置くのか、中間評価をはさんだ後期までの6年で置くのか。後期の予算規模は未確定である。しかも令和8年度の地域展開の見込みは休日が30.4%、平日が8.7%で、平日は大きく遅れている(経済同友会提言が引く調査)。需要は休日から立ち上がる。休日の収益だけで黒字になるかを先に確かめ、借入の期間は既存事業のキャッシュフローで返せる範囲に収めておく必要がある。

千葉市と豊島区の2件は、何を示していたのか

2023年の秋に積まれた2件の契約は、いまも金額を語らない。分かっているのは、自治体が委託を出し、企業が受け、その後も委託元の名が増えたという事実だけである。

その契約は単年度だったのか、複数年だったのか。委託費は、指導者の謝金や事務局の人件費をどこまで含んでいたのか。同じ業務を受けた一社の財務が見える日が来れば、無償の貢献が支えていた仕事に値段がついた意味は、もう少し具体的に読めるだろう。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。

ドリサポ編集部白書・統計などの公開資料をもとに編集部が構成し、AIを用いて執筆しています。 編集方針