成長市場

34%不足は過去の数字か——青果卸12社が運賃より拠点を選んだ理由

物流は削るコスト、運賃は安く抑えるもの。この前提で動く企業の脇で、青果卸12社は運賃より先に拠点を持った。不足見通しが下方修正された局面で、その選択は何を意味するのか。

ドリサポ編集部読了 約8分

2026年6月1日、中部圏の青果卸売会社12社が共同出資で物流会社を設立した。社名はチームフレッシュロジ中部。中核に据えるのは名古屋西流通センターである。

この拠点を軸に、共同輸配送と中継輸送、共同荷受と物流システム化、コールドチェーンの強化を進める。LNEWSの報道によれば、稼働開始は2027年6月以降、2030年度には5万750トンの集荷を目指すという。設立から稼働までには、約1年の空白がある。

注目すべきは順序である。報じられている範囲で、設立の主眼は運賃の改定ではなく、拠点と運び方の組み替えに置かれている。投資額は今回確認できた範囲では公表が見つからなかった。金額すら見えないまま、まだ一台も走っていない拠点に12社が名を連ねたことになる。

運賃を値切る前に、なぜ拠点なのか

物流は削るべきコストであり、運賃は安く抑えるものだ。多くの経営者がそう考えてきたし、その前提で調達の仕組みも組まれてきた。この通念に立てば、12社が先にやるべきは運送会社との価格交渉だったはずである。

だが12社は、値切る側に回らなかった。共同で拠点を持ち、中継輸送の仕組みごと自前で組む道を選んでいる。

なぜか。この問いへの答えは、設立の報道そのものからは読み取れない。当事者の判断の内側を想像で埋めるのではなく、12社が置かれていた環境の側から確かめるほかない。

「34%不足」という数字は、まだ使えるのか

国土交通省の資料は、具体的な対応を行わなかった場合、輸送能力は2024年度に約14%、2030年度に約34%不足する可能性があるとした(物流・自動車局講演資料、2025年1月)。2025年9月30日付の同局資料も、2024年問題で懸念された深刻な停滞は起きていないとしつつ、2030年度に34%不足する見込みがあるとして従来にない対策を求めていた。

ところが2026年3月公表の検討会提言ベースの資料で、景色が変わった。当初想定の約34%のうち、約14%は官民の取組の成果等で概ね克服できたという。輸送需要も約12%減少した。そのうえで資料は、ワーストケースで最大約25%の不足があり得るとし、最大26ポイント程度の輸送力を確保する施策を用意するとしている(「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」)。

34%をそのまま掲げれば、古い数字を使うことになる。では不足は杞憂だったのか。そうではない。最悪でも約25%という水準は、なお四分の一の荷物が運び手を失い得ることを意味する。しかも国交省は、その穴を埋める施策をわざわざ積み増している。

数字が下がったことで見えてきたのは、不足の総量よりも、その偏りである。今回確認できた材料で言えるのは、不足が一律ではなく、拠点や積載率、荷待ちといった機能の差で分かれるという点までである。拠点で荷を束ね、待ち時間を削り、積載を埋められる荷主と、そうでない荷主とでは、同じ運賃を提示しても運んでもらえる確率が違ってくる。

担い手の側の事情は、この見方を裏づける。令和7年版国土交通白書によれば、2024年の就業者に占める55歳以上の割合は運輸業で33.9%(全産業32.4%)、29歳以下は運輸業で11.0%(全産業16.9%)である。トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均より約2割長く、年収は5〜10%低い(内閣府「地域の経済 2023」)。自動車運転職の有効求人倍率は2026年5月に2.37倍へ下がったが、2020年10月以降68カ月連続で2倍台にとどまる(厚生労働省発表の報道)。

供給側が簡単に厚みを増せない構造は、手つかずのままである。加えて運輸業は、車両100両以下の中小規模事業者が97.9%を占める(国交省データ、2024年)。個社が単独で運賃を交渉しても、束ねる機能を持たない相手同士では、確保できる輸送力に限りがある。12社が一つの器にまとまった意味は、おそらくそこにある。

拠点の資金は、どの順序で、誰が出すのか

運べる力が希少資源になるなら、問われるのは運賃の安さではなく、確保にいくら払い、どう回収するかである。ここで資金設計が避けて通れなくなる。

追い風はある。2026年5月13日に成立した改正物流効率化法は、2026年11月1日、つまり明日施行される。認定を受けた中継輸送事業は、建物の固定資産税・都市計画税の課税標準が5年間半分になり、鉄道・運輸機構から出資・貸付を受けられる。計画策定費と初年度の運行経費にも国の支援がつく。国交省は2030年度までに国内20カ所の拠点認定をめざしている(日本経済新聞、LOGI-BIZ オンライン)。

とはいえ、順序を誤れば優遇は絵に描いた餅になる。認定が前提である以上、用地の取得や着工に先立って、認定の可否を確かめる手順が要る。着工前の申請を条件とする特例もあるため、手続きの時期は個別に確認しなければならない。

補助金の位置づけも冷静に見ておきたい。地域の事業者間連携を支援する国交省の事業は、実証・事業化経費で上限5,000万円、補助率1/2以内である。中継輸送の運行経費補助は、上限総額でも1,000万円にとどまり、対象は認定計画に基づく初年度の運行経費等に限られる。拠点の本体投資を賄う額ではない。補助金は計画づくりと立ち上げ期の運転負担を軽くするもの、設備資金は借入・リース・出資で別に組むもの、と分けて考える必要がある。

その切り分けにも濃淡が出る。税制優遇を受けるのは保有する側であるため、用地と建屋は自社保有か、不動産デベロッパーとの共同開発が候補になる。一方、自動化設備や車両は陳腐化が速く、荷主との契約期間が短ければ残価の危うさが残る。こちらはリースの方が負担を抑えやすい。

返済の検証では、34%ではなく、輸送需要が約12%減ったケースを下振れの置き場にしたい。不足見通しが下方修正された以上、34%を前提にした稼働計画は過大になる。荷主との契約期間のなかで返済が回るか、稼働率が想定を下回っても資金が尽きないか。そこまで確かめて初めて、投資判断になる。

12社のような共同出資には、独自の論点がある。出資比率と施設の利用料の決め方によって、1社あたりの負担と、債務が連結に及ぶ範囲が変わる。稼働率が立ち上がるまでのキャッシュ不足を、どの株主が埋めるのか。その取り決めは、合意の段階で済ませておかなければならない。チームフレッシュロジ中部がこの点をどう定めたかは、確認できた範囲では分からない。

取締役会に出す資料も、物差しを変える必要がある。運賃の上昇分だけでなく、輸送力を確保できず出荷が止まるリスクを、投資の採算に織り込まなければならない。有効求人倍率が68カ月連続で2倍台という事実は、確保のコストが容易には下がらないことの傍証である。

稼働前の拠点は、費用なのか資産なのか

2027年6月以降の稼働まで、名古屋西流通センターは収益を生まない。投資額も、いまのところ外からは見えない。帳簿の上だけで見れば、それは先行する費用の塊に近い。

だが、不足が総量ではなく機能の差で分かれていくのだとすれば、同じ拠点は別の姿をとる。運賃を値切る力ではなく、運んでもらえる力を持っているかどうか。12社が設立の日に手にしたのは、おそらく後者の入口であった。

運賃交渉の席に着く前に、自社には何が束ねられるのか。その問いに答えられる企業とそうでない企業の差は、2030年度に向けて、まだ見えない場所で開き始めているのではないか。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。

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