企業向け資金需要はプラスに転じ、個人向けも増加
資金需要判断D.I.(過去3ヶ月の変化)は、企業向けが3ポイント(前回▲1)、地公体等向けが▲4ポイント(前回3)、個人向けが5ポイント(前回3)となっている。企業向けはマイナスからプラスへの転換が確認できる。
企業規模別にみると、大企業向けが5ポイント(前回2)、中堅企業向けが1ポイント(前回▲2)、中小企業向けが1ポイント(前回▲2)と、いずれも前回からプラス方向への変化が見られる。業種別では建設・不動産業の伸びが目立ち、大企業向け14ポイント(前回1)、中堅企業向け8ポイント(前回▲10)、中小企業向け7ポイント(前回▲3)と、同業種での資金需要増加が全体を押し上げた形になっている。
資金需要が増加した要因(規模別の加重平均、重要度3〜1のスケール)をみると、大企業・中堅企業では「設備投資の拡大」(大企業2.20、中堅企業2.25)が比較的高く、中小企業では「手許資金の積み増し」(2.33)や「資金繰りの悪化」(2.00)が目立つ。規模によって資金需要の背景が異なる点は、個別の融資相談の際に参考になる。
個人向けでは、住宅ローンが4ポイント(前回1)、消費者ローンが4ポイント(前回1)といずれも増加方向に動いている。
今後3ヶ月間の見通し(質問6)では、企業向けが6ポイント(前回4)とさらなる増加が見込まれている一方、個人向けは0ポイント(前回1)とやや鈍化する見通しが示されている。
貸出運営スタンスは積極姿勢がやや後退
過去3ヶ月の貸出運営スタンスD.I.は、大企業向け0ポイント(前回1)、中堅企業向け2ポイント(前回3)、中小企業向け3ポイント(前回5)、個人向け1ポイント(前回▲2)となっている。中小企業向けは引き続きプラス圏にあるが、前回調査からは幅が縮小しており、積極化の勢いはやや落ち着いた格好である。
今後3ヶ月間の方針(質問11)をみると、大企業向け1ポイント(前回3)、中堅企業向け0ポイント(前回3)、中小企業向け0ポイント(前回3)と、いずれも前回から大きく低下している。一方、個人向けは2ポイント(前回▲1)と上向いている。企業向けの貸出姿勢については、積極化の勢いが一服する可能性を示唆する数値といえる。
利鞘設定は拡大方向が継続
貸出条件のうち利鞘設定(過去3ヶ月、質問9)のD.I.は、大企業向け・中堅企業向け・中小企業向けのいずれも▲7ポイントとなっている。この指標は「利鞘の縮小=緩和」と定義されているため、マイナス方向の数値は、銀行側からみて利鞘を縮小させた回答より拡大させた回答が多いことを意味する。つまり、過去3ヶ月は利鞘が拡大方向、言い換えれば貸出金利の条件は銀行側にやや有利に動いた可能性がある。
格付別の利鞘設定(質問10、拡大・横這い・縮小の直接回答)をみても、上位格付先12ポイント(前回12)、中位格付先10ポイント(前回10)、下位格付先10ポイント(前回12)と、全格付で拡大方向のD.I.がプラスで推移している。
今後3ヶ月の方針(質問12・13)では、利鞘設定D.I.が大企業向け▲6、中堅企業向け▲7、中小企業向け▲7(質問12)、格付別では上位格付先12ポイント(前回6)、中位格付先12ポイント(前回8)、下位格付先12ポイント(前回8)となっており、特に上位格付先での拡大方向の強まりが目立つ。全体として、利鞘拡大の流れは今後も続く見通しが示されている。
借り手側の実務含意
今回の調査結果を読む限り、資金需要自体は企業向け・個人向けともに増加方向にあり、「貸出を受けやすい局面」という印象を持ちやすい。しかし、貸出運営スタンスの積極化の勢いは前回より鈍化し、利鞘は拡大方向が続いている。これは、量的には貸しやすくなっていても、金利条件については銀行側が強気に出やすい局面にある可能性を示している。
信用枠(拡大=緩和)のD.I.は大企業向けを除きゼロ付近で推移しており、与信枠自体の拡大姿勢は目立って強まっているわけではない。借り手の信用リスク評価・担保設定についても中小企業向けでわずかにマイナス(厳格化方向)が見られる。
実務上のポイント
今回の調査結果を踏まえると、新規融資や借換えの相談時には「量(信用枠)」と「価格(金利・利鞘)」を分けて交渉材料を整理することが有効と考えられる。信用枠自体は大きく変化していない一方、利鞘は拡大方向が続いているため、金利提示を受けた際は過去の借入条件や他行の提示条件と比較し、根拠を確認する姿勢が実務的に重要になる。特に格付が上位の先ほど利鞘拡大の動きが強まっている点は、優良先であっても金利交渉の難度が上がりうることを示しており、決算内容の改善を交渉材料として準備しておく価値がある。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。