2026年8月27日からの大雨により災害救助法が適用された石川県内の被災者・被災事業者に対し、財務省北陸財務局と日本銀行金沢支店が金融機関等に金融上の措置を要請した。既存融資の条件変更や手形取立への配慮など、資金繰りに直結する項目を実務目線で確認する。

何が要請されたか

2026年8月27日、財務省北陸財務局長と日本銀行金沢支店長は、同日からの大雨に伴う災害等(災害のおそれを含む)により災害救助法が適用された石川県内の被災者等に対し、預貯金取扱金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者、電子債権記録機関に対して金融上の措置を講ずるよう要請したことを公表した。今後、災害救助法の適用地域が追加された場合も同様の対応を求めるとしている。

この種の要請は、罹災証明書がなくても被災状況を確認できる代替手段を認めるなど、被災直後で書類が整わない状況を前提にした内容になっている点が特徴である。

預貯金取扱金融機関への要請のうち、資金繰りに関わる項目

本文で明示されている項目のうち、企業の資金繰りに直接関係するのは主に以下である。

  • 定期預金・定期積金等について、事情によっては期限前払戻しに応じ、当該預金等を担保とする貸付にも応ずること
  • 今回の災害等による障害で支払期日が経過した手形について、関係金融機関と話し合いのうえ取立ができるようにすること
  • 支払いができない手形・小切手について、不渡報告への掲載や取引停止処分に配慮すること(電子記録債権の取引停止処分・利用契約解除等も同様)
  • 融資相談所の開設、提出書類の必要最小限化、融資審査の簡便化・迅速化、既存融資にかかる返済猶予等の貸付条件の変更など、適時的確な措置を講ずること
  • 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きや利用効果について、相談に適切に応ずること
  • 罹災証明書を求める手続きでも、現況写真の提出など他の手段による確認や、罹災証明書の後日提出を認めること

いずれも「応ずること」「配慮すること」という要請であり、金利水準や融資枠の具体的な数値は本文に記載がない。個別の金融機関がどこまで対応するかは、実際の相談を通じて確認する必要がある。

証券会社・保険会社・電子債権記録機関への要請

証券会社等には、届出印鑑紛失時の本人確認による払戻し、有価証券紛失時の再発行協力、預かり有価証券等の売却・解約代金の即日払いへの対応が求められている。生命保険会社・損害保険会社・少額短期保険業者には、保険証券や届出印を紛失した場合の請求案内、保険金支払いの迅速化、保険料払込猶予期間の延長が要請された。電子債権記録機関には、電子記録債権の取引停止処分や利用契約解除等への配慮、休日・時間外営業への配慮が求められている。

手形決済や電子記録債権を利用している企業にとっては、支払期日を過ぎた場合でも直ちに不渡り扱い・取引停止処分とならない可能性がある点は、資金繰り管理上押さえておきたい。

本文に記載がない論点

今回の要請文書には、特別融資制度の創設、金利の優遇幅、融資限度額、返済猶予の具体的な期間といった数値的な支援策は記載されていない。あくまで金融機関等に対する「配慮」「便宜」を求める行政要請であり、個別の金融機関がどのような具体的な融資商品・条件変更を用意するかは、本文からは判断できない。石川県や金融機関独自の被災者向け融資制度の有無については、別途各行・信金・信組や県の発表を確認する必要がある。

実務上のポイント

既存融資の返済に支障が出ている、または今後出る見込みがある場合は、取引金融機関の窓口またはコールセンターに早めに相談し、返済猶予等の貸付条件変更を申し出ることが実務上の第一歩になる。罹災証明書の交付が遅れている場合は、現況写真等の代替書類での対応可否を確認する。手形・電子記録債権の決済が困難な場合は、不渡り・取引停止処分の配慮対象となりうるため、支払期日前に取引先金融機関へ事情を説明しておくことが望ましい。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の適用可否についても、早い段階で顧問税理士や取引金融機関に相談しておくと後の選択肢が広がる。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。