日本銀行が2026年8月10日に公表した「貸出・預金動向」2026年7月速報によると、銀行・信金計の総貸出平残は前年比5.4%増となった。市場全体の資金供給姿勢を測る指標として、融資交渉の背景理解に役立つ一方、個社の審査結果を直接左右するものではない点は押さえておきたい。

7月速報の全体像

日本銀行が公表した2026年7月の速報値によれば、銀行・信金計の総貸出平残(前年比)は5.4%増となり、7月平残は6,791,985億円だった。内訳を見ると、都銀等が8.0%増(7月平残2,806,688億円)と高い伸びを維持している一方、地銀・地銀Ⅱ計は4.2%増(同3,186,676億円)で横ばいが続いている。信金は1.9%増(同798,621億円)と、都銀・地銀に比べて緩やかな伸びにとどまる。

2026年1〜3月期から4〜6月期にかけて銀行計の伸び率は5.0%から6.1%へと拡大したが、7月単月では5.9%とやや鈍化している。都銀等も6月の8.6%から7月は8.0%へ低下しており、直近では伸び率のピークを過ぎた可能性がうかがえる。

地銀・地銀Ⅱの内訳と統計上の注意点

地銀(地銀Ⅰ)の貸出平残は前年比4.6%増(7月平残2,627,416億円)、地銀Ⅱは2.4%増(同559,260億円)と、同じ地方銀行でも伸び率に差がある。この差は2026年1〜3月期からほぼ一定で推移しており、急激な変化は見られない。

なお、本速報には2026年1月と5月時点で地銀・地銀Ⅱの計数に「不連続」が生じている旨の注記がある。理由は銀行の合併によるもので、該当時点の前後では数値が単純比較できない。地銀・地銀Ⅱの前年比を時系列で見る際は、この点を踏まえておく必要がある。

預金動向:地銀Ⅱはマイナスに転じている

預金側(実質預金+CD)を見ると、3業態・信金計の平残は前年比1.6%増(7月平残10,744,400億円)。都銀は2.2%増(同4,889,148億円)と相対的に高い伸びだが、地銀・地銀Ⅱ計は1.3%増(同4,229,012億円)にとどまる。

特に目を引くのは地銀Ⅱの動きで、6月の▲0.4%に続き7月も▲0.5%と、前年同月を下回る水準が続いている(7月平残724,587億円)。地銀(地銀Ⅰ)は1.7%増(同3,504,425億円)とプラスを維持しており、同じ地銀区分でも預金動向には差が生じている。

この数値をどう読むか:マクロ指標と個社の融資判断は別

今回の速報は、銀行・信金全体の資金供給・調達の「平均像」を示すものであり、特定の金融機関や特定の借り手の審査姿勢を示すものではない。都銀等の貸出が8%台の伸びを続けていることは、市場全体として資金需要に応じる姿勢が続いていることを示唆するが、これは個々の企業が融資を受けやすくなっていることを直接意味しない。

むしろ実務上重要なのは、こうしたマクロの伸び率と、自社が取引する金融機関・支店の実際の融資姿勢との間にはズレがあり得るという前提を持つことだ。地銀Ⅱのように貸出・預金ともに相対的に緩やかな伸びにとどまる業態区分がある一方、都銀等は高い伸びを維持している。取引金融機関がどの業態に属するかによって、交渉時の温度感が異なる可能性は念頭に置いてよい。

実務上のポイント

本速報の数値をそのまま「借りやすさ」の根拠として銀行との交渉に持ち出すのは避けたい。業態全体の伸び率が高くても、個別の支店・担当者レベルの与信判断とは別物である。実務としては、四半期ごとに公表されるこの種の統計を「市場全体の資金供給トレンドの背景情報」として押さえつつ、自社の資金調達計画は自社の決算内容・返済実績・事業計画に基づいて進めることが基本となる。取引金融機関が地銀・地銀Ⅱのいずれに区分されるかを把握しておくと、業態全体の傾向と自社への提案内容を比較する際の参考になる。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断・投資判断を示すものではありません。制度内容は改正される場合があります。実行にあたっては必ず一次情報をご確認のうえ、金融機関または専門家にご相談ください。